2021 雪那
暖かなこの地に、珍しく大雪が降るという。滅多にないことだと喜ぶ人、異様なことだと戸惑う人。それぞれに思いながら、今日を迎えた。
1章 降り始め
寒さに凍える中、ふんわりと舞い降りてきた透き通った花。悴む手で取ると、消えいってしまうような沫雪だ。とても小さく儚いが、懸命に形を残さんとしている。日に当たると金銀白など、さまざまな色となる。雪の訪れという特別な出来事に、みなが心を躍らせ楽しんでいる。
雪は止まることを知らず降り続ける。
2章 吹雪
雪が徐々に強さを増してきた。雲も分厚くなり、あたりは白黒の殺風景へ様相を変える。雪を楽しんでいた人々も家に戻り、人の気配がなくなった。数少ない道行く人々も顔を埋めて誰かわからない。風とともに刃物のように吹きつける。前も見えないほど激しく淡々と降り積もっていく。
雪は時に障壁として重くのしかかる。
3章 銀世界
吹雪は収まり、雲間から日光が差し込んできた。どのくらい積もったかと外を見た者は魅了された。外の世界は雪化粧をして、いつもとは全く違う顔をしていたのだ。雪が町を飾っていて、あらゆるものが白く輝いている。今この瞬間を精一杯輝かんと、白熱する炎のように煌めいている。それぞれの雪の形は違えど、集まることで一つの情景を創り出していた。周囲を圧倒する美しさで人々の目に焼き付いた。この大雪は何世代にも渡って語り継がれることだろう。
雪はいずれ消えても、心に永く残り続ける。
雪那・・・一瞬にして溶けてしまう美しくも儚い雪の様を表しています
〈込められた思い〉
雪は踊り子一人一人。ひとつではすぐに溶けて無くなってしまう。しかしたくさん集まれば人々を楽しませ、魅了する。誰として同じ人はなく1人だと孤独で不安が募るが、炎での日々や踊りの楽しさを通して一つになることで、集団としてかけがえのないものとなる。